今も続く「チベット問題」とは何か?
「暴動」はなぜ起きたのか?
ちょっと重めの本が多いです。

『ダライ・ラマ自伝』
ダライ・ラマ/著 山際素男/訳
文藝春秋 文春文庫 ISBN4167651092 2001/06
1990年に書かれた2冊目の自伝“Freedom in Exile”の翻訳。出生からダライ・ラマとして即位し、中国の侵攻を受けてインドに亡命。ダライ・ラマの半生と、チベット現代史の流れがわかります。

『チベット 受難と希望--「雪の国」の民族主義』
ピエール=アントワーヌ・ドネ/著 山本一郎/訳
岩波書店 岩波現代文庫 ISBN4006031815 2009/03
1990年に出版され、絶版となっていた名著の復刊。中国による侵攻から1989年ラサ戒厳令あたりまでの流れ、チベット問題の全体像などがわかります。1990年以降のことは書いてありませんが、内容はちっとも古くなっていません。

『レイプ・オブ・チベット―中華的民族浄化作戦 』
西田 蔵之助/著
晋遊舎 ブラック新書 ISBN4883808122
いかにも偽名の著者。そのうえエグいタイトル。しかし、中身はかなり、いい意味で濃いです。2008年3月に始まった動乱の発端、歴史的な民族浄化の経緯、50年来の宗教弾圧、そして青蔵鉄道に代表される経済的な支配。これらを中国による「レイプ」ととらえて、時に冷静に、時に思い入れたっぷりに綴っています。引用元もしっかり示してあるし、類書にはないこの著者だけの一次(?)情報も多そう。756円という値段なら元は取れると思います。

『中国が隠し続けるチベットの真実
 仏教文化とチベット民族が消滅する日』

ペマ・ギャルポ/著
扶桑社 扶桑社新書 ISBN4594056830 2008/06
在日チベット人であり、国際政治学の専門家である著者が、2008年のチベット動乱後に書いたもの。チベットの歴史、チベットで何が行なわれているのか、ダライ・ラマ法王の存在、「暴動」はなぜ広まったのか、中国はなぜチベットをほしがるのか、などをチベット人の立場から描く。

『中国はいかにチベットを侵略したか』
マイケル・ダナム/著 山際 素男/訳
講談社インターナショナル ISBN477004030X 2006/02
中国が、チベットそしてチベット人に対して、初めは友好的に振る舞い、やがてすべてを侵して奪っていく民族浄化の過程を、中国と戦ったチベット人の姿を通じて事実に基づいて描く。

『囚われのチベットの少女』
今枝 由郎/訳
トランスビュー ISBN4901510061 2002/05
尼僧ガワンサンドルは1990年、チベットの自由を求めるデモに参加し11歳で逮捕。その後も再三投獄された上、刑務所内でもデモを行なって刑期を合計22年に延長された。他の尼僧たちと一緒に歌ったメッセージソングがテープに録音されて海外でCDにもなった。海外の人権団体の運動などにより、25歳のとき釈放され、病気療養のため渡米した。獄中での長年にわたる凄惨な虐待・拷問との戦いを描く。チベットでは今も大勢の政治囚が同じ目にあっている。

『雪の国からの亡命 チベットとダライ・ラマ半世紀の証言』
ジョン・F・アベドン/著 三浦順子ほか/訳
地湧社 ISBN4-88503-085-4 1991/01
チベット動乱から亡命政府・難民社会の形成、現在に至るまで、豊富な取材によって綴られた力作。

『チベット入門』
チベット亡命政府情報・国際関係省/編 南野善三郎/訳
鳥影社 ISBN:4-88629-094-9 1999/05
チベット亡命政府による、チベットの現状報告。

『小さい母さん(アマ・チュンワ)と呼ばれて―チベット、私の故郷』
クンサン・ハモ/著
集英社 ISBN408775362X 2006/10
1959年ラサ生まれのチベット人が著者。インドの難民学校に学び、10年ぶりに帰省してチベットを旅する。チベットの激動の現代史と現実をチベット人が綴る。

『あやしいチベット交遊記』
長田幸康/著
現代書館 ISBN4-7684-6780-6 2000/07
どうってことのないチベット人ひとりひとりがもつ人間ドラマをずらりと並べてみたら、何か見えてくるかなあという紀行。意外に重いです。

セブン・イヤーズ・イン・チベット〈ニューマスター版〉
ジャン=ジャック・アノー /監督 ブラッド・ピット他/出演 1997年・米国
ASINB000BKJJ7Y 2005/11
オーストリアの登山家ハインリッヒ・ハラーがイギリス軍の収容所から脱走してチベットに潜入し、若きダライ・ラマ14世の教師となったという実話を元にした映画。ブラッド・ピットが主演したおかげで、日本でも「チベット」の認知度が高まった。

ヒマラヤを越える子供たち Escape over the Himalayas
Maria Blumencron/監督 チベットサポートグループKIKU/販売
ASINB000JMKH1Q 2006/04
中国支配の続くチベットを逃れてネパールに亡命するチベット人は今も毎年1000人以上にのぼる。両親と離れ、冬のヒマラヤを歩いて超えるチベット人の子どもたちの逃避行に同行したドキュメンタリー。

【チベット・ブックガイド】